介護現場でAIは本当に使えるのか?研修講師がリアルに語る

「介護でAIって、本当に使えるんですか?」

研修の場でも、個別相談でも、よく聞かれる質問です。

答えを先に言うと、使える場面と、使えない場面がある。これがリアルな答えです。

「AIで介護が変わる」という話も、「介護にAIは馴染まない」という話も、どちらも半分は合っていて半分は間違っています。

僕は介護福祉士として11年間、現場で働きました。その後フリーランスとしてAI活用の支援をしており、宮崎市介護支援専門員連絡協議会や五ヶ瀬町教頭会でAI研修の講師も務めています。

その経験から、「現場の言葉」でAIと介護の関係を整理してみます。

介護現場でAIが使える場面

記録・書類作成

介護の仕事において、記録業務の負担は深刻です。訪問記録、ケアプラン、サービス担当者会議の議事録、経過記録。ケアマネジャーや施設スタッフが毎日書かなければならない文書は膨大です。

ここはAIが最も力を発揮する領域です。

たとえば会議の音声を録音しておき、文字起こしサービスでテキスト化したあと、ChatGPTに「これを議事録にまとめて」と指示すると、数十秒で整った議事録が出てきます。

手書きで1時間かかっていた作業が、10分以下になることも珍しくありません。

利用者・家族への説明文書の作成

「〇〇について、ご家族に説明する文書を作ってほしい」という使い方も有効です。

担当者が持っている情報をもとに、ChatGPTが分かりやすい説明文を生成してくれます。専門用語を噛み砕いた文章が必要なとき、AIは非常に役立ちます。

スタッフ向けマニュアルの作成

「こういう手順で行ってほしい」という業務マニュアルの初稿を作るのにもAIは使えます。ゼロから書き起こすより、AIに骨格を作らせてから加筆・修正する方が圧倒的に速い。

情報収集・調べもの

制度改正の内容、新しい介護保険の算定要件、薬の作用と注意点。AIに質問する形で情報をまとめてもらえます。ただし、AIの回答には誤りが含まれることがあるため、重要な情報は必ず公式情報で確認する必要があります。この点は注意が必要です。

介護現場でAIが使えない場面

正直に言います。AIにできないことも多い。

利用者さんを「見る」こと

「今日、いつもと様子が違う」と気づく感覚。食事の量、話し方、目の動き。そういった微細な変化を読み取るのは、人間だからできることです。

AIはカメラ映像を分析して「転倒リスクが上がっている」という情報を出すことはできます。でもその情報をもとに「今日は特に気にかけよう」と動くのは、やはり人間です。

家族・本人との関係を築くこと

「この家族は今、不安を感じている」「本人はまだ施設入所に納得していない」
そういった人間関係の機微を読んで、信頼関係を築いていくのはAIには無理です。

介護の本質は人と人のつながりの中にあります。その部分はどれだけAIが進化しても、人間が担うべき領域です。

緊急時の対応

急変、転倒、利用者さん同士のトラブル。
現場で何かが起きたとき、その場で判断して動くのは人間です。AIはそこには介在できません。

「AIに仕事を奪われる」は本当か

研修の場で必ず出てくる不安です。

結論から言うと、少なくとも今の段階では、介護の仕事全体がAIに置き換わることはないと思っています。

AIが得意なのは「繰り返し作業」「文章の生成・整理」「パターンの認識」です。介護の仕事の中でその割合が大きいのは確かですが、核心にある「判断」「関係性」「緊急対応」はAIには難しい。

むしろ僕が心配しているのは逆のことです。

AIを使わない介護職員と、使いこなす介護職員の間で、仕事の質と量に大きな差がついていく。記録に追われ続ける人と、記録をAIに任せて利用者さんと向き合う時間を作れる人。
その差が、これから広がっていくと感じています。

「奪われる」より「使いこなせるかどうか」の問題です。

現場でAIを始めるなら、どこから?

一番ハードルが低くて効果が出やすいのは、議事録・記録文書の作成です。

まずChatGPTの無料アカウントを作って、実際の会議の内容(個人情報は伏せて)を貼り付けて「議事録にして」と試してみてください。それだけで「使える」かどうかが分かります。

費用は0円です。

次のステップとして、音声録音からの文字起こしとの組み合わせができると、さらに効率が上がります。スマホのボイスメモとGoogleドキュメントの音声入力を組み合わせれば、こちらも無料で始められます。

まとめ

介護現場でのAI活用を、一言でまとめるとこうなります。

AIは「作業」を担い、人間は「判断」に集中する

記録・書類・情報収集はAIに任せて、その分の時間で利用者さんと向き合う。それが介護現場でのAI活用の正しい方向だと思っています。

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